新共同訳で旧約聖書のシラ書を通読した。51章もあってかなり量があるが、内容への違和感は大きいが、割と読みやすい。
英語版Wikipediaはかなり丁寧にシラ書について言及している。イエスが生きた時代より150年から200年前に書かれた文書でカトリックは旧約聖書の正典に位置づけ、プロテスタントでは外典に位置づけられている。激しい女性蔑視を含め、奴隷に関する記述など、現代の人権感覚に全く整合しない内容が含まれ、不快な記述は多い。
一方で日本語の新共同訳書名では「シラ書[集会の書]」となっているように、教会の生活規範としての記述が大半を占め、教育的な文書となっている。44章からはエノク、ノアを始めとする英雄列伝が延々と続く。この部分を読むことで自分のロールモデルを見つけ、果たすべき役割を気づかせる効果もあるかもしれない。教育は価値観の刷り込みでもあるから、効果的な教科書と言えないこともない。
社会の安定をどうやって達成するか、様々なアプローチが取られてきた。認定教科書アプローチもその一つだと思うが、倫理に関する部分には必ず為政者バイアスが入る。ナショナリズム、階級維持指向が高まりやすい欠点がある。それでも、そこそそうまく生き残るためのノウハウには一定の価値がある。
反面教師的な意味を含め、一読の価値のある書物と感じた。