Not the End of the World

これからの地球のつくり方 ―データで導く「7つの視点」―読了。日経新聞の『(短評)『これからの地球のつくり方』ハナ・リッチー著』を読んで気になったのがきっかけだが、読んで良かった。

「はじめに」でも「訳者あとがき」にも出てくるが、Factfulnessの影響が色濃い。

データを分析すると、直感に反することが出てくることが少なくないが、正常性バイアスとか、常識に目が曇らされることは日常的にある。学者やデータサイエンティストだって、相当意識的に客観分析をしようとしてもバイアスは入る。著者のHannah Ritchie氏は、その現実にも触れながら、謙虚にかつ大胆に仮説を提示している。一言で言えば、地球はかつてないほど良くなりつつあるという話だ。

原子力の話も出てきて、福島で原発事故による放射能汚染で死んだ人は極少数だと述べている。彼女はリスクを軽視してはいない。ただ、データで見る限り悪くはないと言っている。感情的に受け入れられない人は少なくないと思うが、私はそれが現実だと思う。脱炭素やエネルギー需要の拡大を考えれば原子力は有望な供給源だ。彼女は面積比で議論することが多い傾向がある。地球環境を考えるときには面積比で考えるのは合理的だ。森林伐採の最大の理由は農業であり、合理的な手法を用いれば環境破壊を減少させつつ生活水準を向上させる方法はあるし、結構な速度で実現されつつあるという彼女の指摘はおそらく正しい。

もうだめだと考えるより、やれることをコツコツやるほうが遥かに良い。そして、事実を情報として収集し適切な分析を行って、推奨事項を提示できる人のために予算をつけ、その叡智の内で良いと思われる施策を選んで自分ができる範囲のことを行っていけば良いのだ。

お薦めできる一冊。

feedback
こちらに記入いただいた内容は執筆者のみに送られます。内容によっては、執筆者からメールにて連絡させていただきます。