2024年4月18日にPower of Place Global Webinar - April 2024を聴講した。
講演資料は、Power of Placeのページからダウンロード可能である。Leesmanはオフィスデザイン高度化のための調査研究をしている会社で、今回の発表でも30万人以上のデータから分析を行っている。(Leesmanモデルは以前個人から考えるABW(メモ)で紹介した)。おそらくWebinarもやがてページに視聴可能なリンクが掲載されるだろう。
その調査によれば、86%の調査対象企業従業員が現在ハイブリッドワーク(オフィスとオフィス外勤務の併用)を行っていて、冒頭の画像(レポートではP7)のように、概ね週2〜3日オフィスに出る人が24%と分類の中では一番多い。当然といっても良いと思うが、フリーアクセス(自由席)も6割越えとなっていて、企業オフィスの形態は変わってきている。
LMIという指標で優良オフィスと通常オフィスを比較すると従業員の体験(満足度に近い)には優位な差異があるが、必ずしも出社率が上がるとは言えない。ハイブリッドワークが選択可能になると、オフィスの居心地に関わらず在宅を含むオフィス外勤務を選択する人は減らない。従業員は合理的と思う働き方を選択する。
ウェビナーの結論としては、
In a hybrid working world, attendance rate isn't the only metric of success. Employee experience should be your first focus.
ハイブリッドな働き方の世界では、出社率が唯一の成功の指標ではありません。 経営は従業員エクスペリエンスを最重視するべきです。
とあった。委細はレポートを読めばわかるが、オフィスエクスペリエンスが高ければ、来客を迎えるためや同僚との協業を行うためにオフィスに出社する傾向が高くなる。オフィスに出社することで、非公式な社交などリモートワークでは期待できない経験が得られて従業エクスペリエンスが上がる。社業にとって大事なのは、帰属意識が高まり助け合いが機能して、業績が向上することだから、「経営は従業員エクスペリエンスを最重視するべきです」という考え方に賛同する。出社率を指標にするのでなく、出社した時のエクスペリエンスの高さがリモートワーク時の従業員の執務姿勢に影響を与えるという相関分析からの指摘とも言える。
オフィス回帰を求める経営者は多く、ハイブリッドワークの進展にも関わらず平均LMIは向上しており、魅力的なオフィス環境に注意を払う経営者が多いことがわかる。データの相関分析では、誇りを感じられるオフィス設計、プライバシー確保と集中作業特性、コミュニティ形成容易化、楽しさといったデザイン配慮が重要であることがわかっていると発表された。
ウェビナーではLMIの高いオフィス例の写真が数枚紹介されたが、従来のオフィスとは異なりオープンで居心地、快適さが配慮されていて、欧州の特徴的、挑戦的なコワーキングスペースの雰囲気に近い。働く場所としての機能性はしっかり確保した上で、集う場所という視点が重視されている。
平均LMIの向上から見ても、オフィス更改投資は積極的に行われている。
If you think the cost of creating an outstanding workplace is high, think about the cost of not creating one.
優れたワークプレースを整備するコストが高いと感じる経営者には、整備を行わないことによる損失について考えることを推奨する。
最後にコメントされていた上記の主張は重い。ホワイトカラーの働き方に関する個別企業を越えたデータドリブンな改善が重ねられていて、Leesman+認証を受けている企業は、金融機関や製薬会社を中心に欧州、北欧、北米、南米、インド、オセアニアに点在しているが、日本企業はない。積極的にベンチマークに参加して、ともに成長しつつ自社の優位性を高めようとするアプローチはまだまだ自前主義から脱することが難しい日本企業にはハードルが高いのかも知れないが、私はいつまでも参加しないでいることは国際競争で不利になることを意味するのではないかと懸念している。